【ハイブリッド】
丸の内キャンパス、オンライン(Zoom)いずれでも参加可能です。ただし今後の状況により【オンラインのみ】の開催となる場合があります。
資本主義の限界をめぐる議論が喧伝されていますが、その多くは貧困、格差、環境、人権問題など現代社会の病根の多くが(株主)資本主義によって生み出されたのではないかという問題意識に帰結します。この資本主義の限界については、ウェーバーやシュンペーター、ドラッカーなどの著書を見れば、100年以上も前から予見されていたことがわかります。
古今の名著をじっくりと読み解き、資本主義の問題点を理解すると共に、これからの新しい資本主義のあり方について皆さんと議論したいと思います。
資本主義をめぐる現代の諸問題と関連付けながら、各回の課題図書を解説します。事前に読む必要はありません。講座終了後、手に取って理解を深めていただければと思います。
講師による講義と、事前課題の共有・ディスカッションを中心に進めます。事前課題は各回の設問に従ってできるところまでで結構ですのでご自分なりに考えをまとめてみてください。講師からのフィードバックやクラスディスカッションでより考えを深めます。
5月13日(土)14:00-17:00
マイケル・サンデルは、あらゆるものを市場取引に乗せることによって、倫理的、道徳的に大事なものが失われていく、あるいは腐敗していくのではないかと指摘した。たとえば「赤ん坊市場」や「血液市場」が現実化すると、伝統的な養子縁組や献血といった人間社会の利他的な美徳すら消滅してしまう可能性がある。このサンデルの指摘について考える。
5月27日(土)14:00-17:00
マックス・ウェーバーは、19世紀初めに資本主義がどのような経緯で成立したかを分析するとともに、その行く末として、道徳や温かみのない、冷たい「鉄の檻」のような組織に行きつくと予言した。彼の予言した資本主義の行く末と、現代の社会の諸問題を重ねてみると、資本主義に欠けているものを的確に見抜いていたと言えるかもしれない。このウェーバーの予見について議論する。
6月10日(土)14:00-17:00
マネジメントの発明者と言われるドラッカーは、デビュー作において、産業革命後に生まれた資本主義は全員を幸せにするのではなく、資本家だけが儲かるブルジョア資本主義に陥り、その終焉がファシズムを生み出したと分析した。このことは現代世界の極右勢力の台頭やトランプに代表される覇権型リーダー待望論と酷似している。このドラッカーの議論について考える。
6月24日(土)14:00-17:00
「イノベーション」の提唱者シュンペーターは、資本主義が成功・成熟するにつれ、政府介入への抵抗力を持っていた自立した中小企業が駆逐され、大企業の支配が強まる。その結果として、政府の介入を招く国家管理型の資本主義に変容することを予見した。このシュンペーターの考えについて議論する。
7月8日(土)14:00-17:00
日本の経済学者 宇沢弘文はフリードマンに代表される市場原理主義を厳しく指弾した。利益のためなら、何をしても構わないという風潮が広まり、人間の尊厳や自然への配慮が失われることを危惧していたためである。つまり経済成長と人間の幸せが必ずしも一致しないことに気づいていたとも言える。この宇沢の考えについて議論する。
7月22日(土)14:00-17:00
近年世界で注目を集めるのが、世界経済フォーラムの創設者であり、現会長のクラウス・シュワブが提唱した「ステークホルダー資本主義」である。企業が株主だけでなく、従業員や、取引先、顧客、地域社会といったあらゆるステークホルダーの利益に配慮すべきと考えるもので、国連のSDGsの考えにも合致している。岸田首相が提唱した「新しい資本主義」政策にも影響を与えていると言われるこの「ステークホルダー資本主義」を理解すると共に、これからの資本主義のあり方について考える。