いまや「安全保障」の概念は、古典的な軍事的安全保障や外交を中心とした国際安全保障といった狭義の概念から大きく拡張している。グローバル化や複雑化する国際情勢により、外交や軍事力だけでは解決できない問題が浮き彫りになってきた。国家の安全を確保するために、政治、経済、環境、技術など多角的な要因を考慮する広義な「安全保障」を論じる必要が生じている。
今回の講座では、二部構成で日本を取り巻く「広義の安全保障」を考えたい。第一部では、日本と関わりの深いユーラシア地域の大国(ロシア・インド・中国)の内在論理を掘り下げる。第二部では日本が直面する新たな安全保障課題として、先端科学技術、災害時の自衛隊の役割、気候変動問題をとりあげる。各回ともそれぞれの領域の専門家をゲストに招き、探索的な議論を重ねたい。
各回、事後に感想や講師に質問したいことを所定様式に記入し提出いただきます。感想と質問はクラス全体で共有し、さまざまな観点・経験からの感想を交わしながら学びます。
1982年生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科修了(政治学修士)。民間企業勤務を経て、未来工学研究所特別研究員、外務省情報統括官組織専門分析員、ロシア科学アカデミー世界経済研究所客員研究員、国会図書館調査員などを歴任し、2019年より東京大学先端科学技術研究センター特任助教。2023年12月より現職。
専門は安全保障論、国際関係論、ロシア・旧ソ連諸国の軍事・安全保障政策。特に軍改革、ハイブリッド戦争、核戦略、インターネット統制など。
『「帝国」ロシアの地政学』でサントリー学芸賞を受賞(2019年)。
開催形態 | ハイブリッド開催(対面(キャンパス)、オンライン) |
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日程 | 2025年 5/31、6/28、7/26、8/9、8/30、9/27(すべて土曜日) 欠席時は録画映像の視聴が可能です。 |
時間 | 14:00-17:00(3時間) |
定員 | 25名 |
会場 | 慶應丸の内シティキャンパス、オンライン(Zoom) |
参加費 | 110,000円(税込) 割引制度・キャンセル規定 |
お問い合わせ | 担当:竹内 03-5220-3111 個別相談 資料請求 |
第1回 5月31日(土)14:00-17:00(3時間)
軍事力を背景に北方領土周辺での活動を活発化させ、サイバー攻撃や情報戦を通じて日本の安全保障に影響を与えているロシア。さらに中国との連携強化は、日本周辺の安定を脅かす要因となっている。ロシアは日本と周辺国をどのように見ているのか、多面的に読み解く。
第2回 6月28日(土)14:00-17:00(3時間)
中国は軍事力の増強や東シナ海での領海侵入、尖閣諸島を巡る挑発行動、さらにサイバー攻撃や情報戦といった方法で地域の安定や日本の主権に直接的な脅威をもたらしうる。今後中国のどのような動きを注視していくべきか、議論する。
第3回 7月26日(土)14:00-17:00(3時間)
インドは日本に直接的な軍事的脅威を与える国ではないが、中国を念頭に置いた安全保障戦略や経済競争において、インドの台頭が地域のパワーバランスや日本の影響力に間接的な影響を及ぼす可能性がある。日本はこの台頭する大国とどう向き合うべきか、考える。
第4回 8月9日(土)14:00-17:00(3時間)
科学・技術の発展がますます加速する中、新興科学技術が外交・安全保障に大きな影響を及ぼしていることは見逃せない。科学技術の発展が国内政治においてどのように推進され、規制されていくのか、またそれが国際安全保障にいかなる影響を与えるのか。米国と日本の事例を中心に、政治学的なアプローチから分析する。
第5回 8月30日(土)14:00-17:00(3時間)
大規模自然災害は人命の損失のみならず甚大な物理的損失をもたらし、個人の生活基盤はもとより、経済にも重大な影響を与えかねない。そこで大きな役割を果たす自衛隊の防災作戦の現状や今後について見聞する。
第6回 9月27日(土)14:00-17:00(3時間)
昨今、気候変動が国際政治の1つの重要ファクターになっている。例えば温室効果ガスの排出削減を目標に掲げるパリ協定に各国が合意する中、トランプ米大統領は協定脱退を宣言。中国やインドなど新興国が条件闘争を始め、国際協調が動揺している。各国の利害が錯綜する政治力学を解き明かし、日本が進むべき道を考察する。