禅の修行は「己事究明」、つまり、わたしたち一人一人が「自分とは何者か」「何のために生きているのか」「人生において何を為すべきか」と自分自身に問いかけ、毎日の暮らしを生き抜いていく意味、人生の意味を、自ら見つけ出していく自己探求の道です。
本講座では、「己事究明」の道行きを、十枚の画を用いて解説する『十牛図』を手引きとして、今、自分の立っている場所を振り返り、自分の人生において、どこに向かって、何を求めて行くべきなのか、『十牛図』にこめられた禅の智慧を学びながら、考えます。
『十牛図』は中国・北宋時代末、廓庵という禅僧によって作られたとされています。大切な牛を見失った一人の若者が、この牛を捜す旅に出かけ、見つけ出し、飼い馴らして家に連れ帰る物語が十の場面によって描かれています。その他「六牛図」「四牛図」といったさまざまなテキストを参考にしながら、一人ひとりが自由に「自分の十牛図」の物語を紡ぎ出し、より深く自分自身と向き合うことを目指します。
伝統的には、牛は“本当の自分”を象徴しており、1「尋牛」(牛を探す旅に出かける)、2「見跡」(足跡を見つける)、3「見牛」(牛を見つける)、4「得牛」(牛を捕まえる)、5「牧牛」(牛を飼い馴らす)、6「騎牛帰家」(牛の背中に騎って家に帰る)、7「亡牛存人」(牛のことを忘れる)、8「人牛倶亡」(牛のことも自分のことも忘れてしまう)、9「返本還源」(悟りの境地に至る)、10「入鄽垂手」(世間に出掛けていって人を導く)という物語の流れとなっています。本講座では、廓庵禅師の『十牛図』の他に、「六牛図」「四牛図」といったさまざまなテキストを参考にする予定です。
課題として講義動画(30~60分程)の事前視聴および感想・質問の提出、提出課題のクラス全体での共有を行う予定です。当日は講師や参加者同士でのお話、質疑応答、坐禅を行います。
第1回と第5回は禅寺に赴きます(現地集合・現地解散、交通費各自負担)。オンラインでは参加いただけません。欠席された方に限り講話部分の録画を後日視聴いただけます。
各回、禅修行の一つである坐禅を行います。初めての方向けに丁寧に指導いたします。体調に応じて椅子のご利用も可能です。禅寺での各種体験も初めての方を前提に実施します。僧侶の案内に従い、不明点があれば遠慮なくご質問ください。(指導:東京禅センター)
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程を修了、博士号取得。平成9年京都紫野大徳寺専門道場に掛搭。平成23年山梨県甲州市塩山妙心寺派乾徳山恵林寺副住職、同26年住職に就任。各地の講演会で禅について、また禅僧の観点から社会問題について熱く語り、恵林寺の坐禅会には遠方からも参加者が集まる。2016年 NHK SWITCHインタビュー達人達「立川談春×古川周賢」出演。
開催形態 | ブレンディッド 第1回(金龍寺)、第5回(恵林寺):対面 第2回~第4回:ハイブリッド |
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日程 | 2025年 4/5、4/19、5/10、5/24、6/7(すべて土曜日) 上記の他に事前講義動画の視聴があります。 |
時間 | 第1~4回:13:30-16:30(3時間)、第5回:10:30-16:30(6時間) |
定員 | 20名 |
会場 | 第1回:白雲山 金龍寺(東京都台東区寿2丁目10番地4号) 第2回~第4回:慶應丸の内シティキャンパス、オンライン(Zoom) 第5回:乾徳山 恵林寺(山梨県甲州市塩山小屋敷2280) |
参加費 | 110,000円(税込) ※金龍寺・恵林寺までの交通費は各自負担(現地集合、現地解散) 割引制度・キャンセル規定 |
お問い合わせ | 担当:柳 03-5220-3111 個別相談 資料請求 |
第1回 4月5日(土)13:30-16:30(3時間)
人生100年時代の到来が現実味を帯び、健康で豊かな人生を謳歌できる時代が語られる一方で、それでもわたしたちは限られた生命を生き、「生老病死」という大きな問題に向き合わねばなりません。限りある人生を後悔なく生きるためには、「自分とは何者か」「何のために生きているのか」「人生において何を為すべきか」という問題に、真剣に向き合うことが大切になってきます。
第1回は、その手がかりとなる『十牛図』について、大まかな全体像を学びます。会場を浅草の禅寺金龍寺とし、坐禅にも取り組みます。
第2回 4月19日(土)13:30-16:30(3時間)
人生の経験も知識も十分に無い中で社会へと旅立ち、自身の足で人生を歩み始めた頃、眼の前に現れる様々な問題に立ち向かい、無我夢中で毎日を送る中では、人生の意味を根本から考える機会はどうしても失われがちになります。しかし、経験を積み知識を増やし、様々なことを学んできた今、あらためて自分の人生を振り返るとどうでしょうか。自分の人生において目指すもの、自分の人生の意味はどこにあると考えられるでしょうか。
『十牛図』は、人生全体を貫くものを「牛」として描いています。自分にとっての「牛」とは、一体いかなるものでしょうか。1「尋牛」(牛を探す旅に出かける)、2「見跡」(足跡を見つける)図を手掛かりに考えます。
第3回 5月10日(土)13:30-16:30(3時間)
人生を通して求めるものを見つけた時、それはどのような体験となるでしょうか。
また、自分の人生の中で、「これだ」というものを見いだしても、それをわがものとするためには、さらにその先の努力が必要となることはよくあります。
自分の人生の大きなテーマに気がついた時に、どのようなことを感じ、自分はどのように変わったでしょうか。3「見牛」(牛を見つける)、4「得牛」(牛を捕まえる)図を手掛かりに考えます。
第4回 5月24日(土)13:30-16:30(3時間)
人生を通してのテーマを見いだした時、それをわがものとするためには、自分自身が変わらなければならないことがあります。しかしながら、自分が変わる・自分を変えることは、容易ではありません。
自分の生き方が根本から変わる時には、「自分自身と和解する」ことが重要になってきます。5「牧牛」(牛を飼い馴らす)、6「騎牛帰家」(牛の背中に騎って家に帰る)図を手掛かりに考えてみましょう。
第5回 6月7日(土)10:30-16:30(6時間)
最終回は、山梨の名刹恵林寺にて実践を通じて学びます。修行の場として磨き上げられた禅寺は、人生の根本的な問題に向き合い、じっくりと考えるのに最適な場所です。
『十牛図』の続き、7「亡牛存人」(牛のことを忘れる)、8「人牛俱亡」(牛のことも自分のことも忘れてしまう)、9「返本還源」(悟りの境地に至る)、10「入鄽垂手」(世間に出掛けていって人を導く)を含めて、『十牛図』の全体を考えながら、自分の中に紡がれている「わたしの十牛図」を再検討します。